風間志織監督作「チョコリエッタ」「せかいのおわり」「火星のカノン」3作を一挙公開!

 高校2年の時に制作した8mm『0×0(ゼロカケルコトノゼロ)』が、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)84に入選。第一回PFFスカラシップを獲得し製作された『イみてーしょん、インテリあ』(85)は、トリノ国際映画祭に招待されるなど10代から脚光を浴び、「天才少女の出現!」と騒がれた、風間志織監督。22才で撮った『メロデ』(88は、8mmながらユーロスペースでロングラン上映され、つづく『冬の河童』(95)では ロッテルダム国際映画祭タイガーアワード(グランプリ)を受賞。『火星のカノン』(01)では第14回東京国際映画祭にて日本人初のアジア映画賞を受賞。『せかいのおわり』(04)と共に、2作連続でベルリン国際映画祭フォーラム部門にノミネートされるなど、国内外でも高い評価を得てきた。
  初の原作ものとなった『チョコリエッタ』(14)では、森川葵、菅田将暉を起用し、設定を原発事故から10年後の2021年に翻案し映画化。未来に希望が見えない21世紀を生きる少年少女たちを寄り添うように描いた。 設定の年である本年、リバイバル上映が決定!撮影当時10代だった森川、菅田をはじめ、岡山天音、三浦透子など、今の日本映画界を牽引する若手俳優たちが集結した珠玉の青春映画。

風間監督が21世紀に撮った2作『火星のカノン』『せかいのおわり』がデジタルリマスターされ併映が決定。

  2001年製作『火星のカノン』は、小日向文世、久野真紀子(現・クノ真季子)、中村麻美らが出演し、家族を持つ男との恋愛やLGBTも同じ地平で「愛する」とは何かを描く。つづく2003年製作『せかいのおわり』も、中村麻美、渋川清彦、長塚圭史、田辺誠一、つみきみほ、小林且弥、高木ブーなど多彩な出演者が揃い、幼なじみの男女を中心にすれ違う恋模様をコメディタッチで写し出す。

チョコリエッタ

2014年製作/159分/PG12/日本  (http://chokolietta.com)
出演:森川葵 菅田将暉 岡山天音 三浦透子 須藤温子 市川実和子 村上淳 宮川一朗太 中村敦夫
監督・編集:風間志織  脚本:風間志織 及川章太郎  原作:大島真寿美:(「チョコリエッタ」(角川文庫刊))
プロデューサー:伊藤直克 撮影:石井勲  照明:大坂章夫  録音:湯脇房雄  美術:丸尾知行  音楽:鈴木治行  スクリプター:田口良子
エンディング曲:森川葵「JUMP!」


【物語】知世子が5歳のとき、母親が交通事故で亡くなった。それ以来、兄弟のように育った愛犬ジュリエッタを心の支えにしてきたが16歳の時に死んでしまう。短く髪を切り、犬になろうとした知世子。進路調査に“犬になりたい”と書いて担任から呼び出された日、映画研究部の部室を訪れる。母が好きだったフェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」を見れば、ジュリエッタに会えるような気がしたのだ。しかし、そのビデオテープは既に部室にはなく、卒業した先輩・正岡正宗私物だったち聞き家を訪ねる。浪人中の正宗は、自室で自分が撮った映像を編集していた。正宗は知世子に“俺の映画に出ないか”と誘う。知世子は不機嫌な顔をカメラに向けながらも、何となく正宗に自分と似たところを感じ、次第に彼を受け入れてゆく。まるで、「道」のザンパノとジェルソミーナのように、バイクに乗って2人の撮影旅行が始まる。街を走り、山を走り、海に出る。喧嘩、事故、初めてのホテル。旅は2人に何をもたらすのか……。

せかいのおわり

2004年製作/112分/日本  (http://sekaino-owari.com)
出演:中村麻美   渋川清彦 長塚圭史 安藤希 土屋久美子 クノ真季子 長宗我部陽子 高木ブー 田辺誠一
監督:風間志織 脚本:及川章太郎
プロデューサー:伊藤直克 撮影:石井勲 美術:丸尾知行 録音:臼井勝 真弓信吾 音楽:岸野雄一 スクリプター:田口良子 
テーマ曲:「I'm through with love」 チャック・ベリー / BITO


【物語】店長・三沢雪彦と従業員・慎之介は、盆栽ショップ「苔moss」を営んでいる。ある日、大荷物を抱えた慎之介の幼なじみ・はる子が訪ねてくる。付き合っていた彼に追い出されたという。その夜からはる子と慎之介、三沢の共同生活が始まることに。はる子は慎之介が自分を想う気持ちには気づかない。それなのに、店長が慎之介に抱く気持ちは見透かしてしまった。店長の気持ちにはまったく気づいていない慎之助。はる子は言う。「ちゃんと彼女作んなよ。中途半端なナンパとか、マジでやめな」。その夜、何も言わずにはる子が姿を消す。数日後、携帯にはる子から着信があり、再会した慎之介ははる子に思い切って想いを伝えたが、彼氏ができたことを告げられ、慎之介は呆気なくフラレてしまう。再びナンパ男になった慎之介が声をかけた女の子と家にいると、はる子が突然舞い戻ってきた。はる子のオンナのコの部分に、慎之介の想いは止められなくなる。しかし、次の日またしても、はる子はいなくなり・・・。

火星のカノン

2001年製作/121分/日本  (http://kaseino-canon.com)
出演:久野真紀子 小日向文世 中村麻美 KEE はやさかえり 篠崎はるく 和久田理人
監督:風間志織 脚本:小川智子 及川章太郎
プロデューサー:伊藤直克 撮影:石井勲 照明:大坂章夫 録音:鈴木昭彦 美術:松本知恵 音楽:阿部正也 記録:田口良子
エンディング曲:RCサクセション「たとえばこんなラブソング」


第14回東京国際映画祭 アジア映画祭受賞 / ブエノスアイレス国際映画祭 撮影賞受賞 / ポルトガル国際映画祭 シルバープレート賞受賞


【物語】絹子には火曜日しか会えない恋人・公平がいる。彼は他の日には妻と娘が待つ家に帰ってゆく。ズルくてスケベでいいかげんだけど優しい公平。そんな彼と絹子はなかなか別れられない。そんなある日、絹子は昔のバイト仲間・聖に再会する。聖の同居人・真鍋もいれて3人で食事をしようとスーパーに出かけた絹子は、そこで娘と買い物中の公平と会い、ショックを受ける。聖は、公平とは別れたほうがいいと口うるさい。やがて真鍋の所を追い出された聖は、絹子の隣の部屋に引っ越してくる。実は聖は絹子のことが好きなのだ。同性の聖から告白をされて、絹子は戸惑うが……。

コメント

あの頃、確かにちよことして色んな想いを抱えて必死に毎日を生きていました。
自分のことでいっぱいだったあの頃と比べ少し周りを見ることができるようになった今、 この作品を撮っていた時には想像もつかなかった今を生きている人達がこの作品を観て何を思うのか、とても気になります。

森川葵(「チョコリエッタ」主演)

生き抜くために不機嫌にならざるを得なかった「チョコリエッタ」を、 風間さんは、エールを送るみたいに撮ってくれた。 観終わってひと月経ち、ふた月たち………時が経てば経つほど、いくつものシーンが うつくしく立ち上がってくる。
これぞ、映画の力だな、と思います。

大島真寿美(「チョコリエッタ」原作者)

「今もまだ何もわかっていないが、もっと何もわからなかった20年前、 映画を通して何かのヒントみたいのを教えてくれたのが風間さんだ。 20数年、役者というものを続けてこれて、過ぎ去る現場もあれば忘れられない 現場もある。風間さんの現場は決して忘れられない。過去の作品がデジタルリマスターというもので鮮明に観れるのは楽しみだし、個人的には歯がゆい感じもする。が、俺は今の風間さんの作品が観たいし、今の風間さんの現場にいたい。風間さん、そろそろじゃないですか?」

渋川清彦(「火星のカノン」「せかいのおわり」「チョコリエッタ」出演)

2001年撮影の「火星のカノン」が風間組初めての参加作品でした。 いつもニコニコしてる印象でしたが、こだわりは激しく、火星のカノンで主役のクノ真季子さんとホテルの卓球台でピンポンしながらの会話はとにかくゆっくり打ちながらと要求され、なんとか最後まで終えて監督を見ると右手の親指と人差し指でマルを作ってOKサインかと見せてスッと人差し指を立てて、もう一回。 それが20数回繰り返されました。覚えてますか? 40代だったあの時の僕がデジタルリマスターされて久々にスクリーンに甦るんですね。 時はあっという間に過ぎて行きました。 前期高齢者の僕が完璧に高齢者になった頃又ご一緒出来たら嬉しいな。

小日向文世(「火星のカノン」「せかいのおわり」出演)

気合いという言葉は似合わないけれどspiritの塊だったりする。 繭玉に包まれているような現場の中でずっと撮影中でいいのに…と思わせてくれる貴重な監督です。

クノ真季子(「冬の河童」「火星のカノン」「せかいのおわり」「チョコリエッタ」出演)

風間志織の世界観が20年の時を経てこの時代に再び解き放たれることに、無性に喜びを感じています。2作品が今の時代のアナタの感性に受け入れられることを確信しています。なぜって、風間監督の感性は時をこえても輝き共振をおこすものだから。

中村麻美(「火星のカノン」「せかいのおわり」出演)

もう三十路にかかろうかという頃なのに、どこか青春の思い出の中にあるような映画です。悩んだり笑い転げたり。ひょっとするとそれぞれ役の青春を味わえていたのかもしれません。何が起きるわけでもないけど『せかいのおわり』というタイトルがやけに眩しい映画でした。

長塚圭史(「せかいのおわり」出演)

占星術の解釈では、200 年続いた物質の時代が 2020 年暮れに終わり、風の時代に入ったそうです。自由で、場所にとらわれず、価値観を固定せず、物質に固執することのない新しい価値観。風の時代。風間監督はその風を生み出し、これからも観客や演者やスタッフに対して、そして映画そのものに対して、深い愛情を持って映画を作り続けるのだと思います。

田辺誠一(「せかいのおわり」「冬の河童」出演)